ジム・ロジャーズ「農業は今後10年~20年にわたって、もっとも魅力的な職業のひとつになる」
あなたは、自分が働く会社やキャリアの未来を意識したことはありますか?1970年には約50年あった会社の寿命は、2008年には10.3年、現在では確実に10年を切っているといわれており、また、ソフトバンクのトップを務め、稀代のカリスマ経営者として知られる孫正義氏も、「企業の99.98%は30年以内に消える運命にある」と述べているように、たとえ就職先の企業が終身雇用を約束しても、30年後には所属する会社自体が消滅してしまっている可能性も否定できません。
その一方で、昨今の定年延長の流れを踏まえれば、これからの時代は、22歳で大学を卒業してから70歳前後まで、じつに50年間も働く可能性も十分にありえます。個人のキャリアが企業のキャリアより長いのですから、1つの会社で職業人生を終えることなど、ほとんど不可能に近く、今ほど不確実で先が読めない時代はないと言っても過言ではないでしょう。
そんななか、キャリアとしての「農業」が脚光を浴びています。世界的にも著名な投資家であるジム・ロジャーズ氏は、農業ビジネスについて、「今後10年~20年にわたって、もっとも魅力的な職業のひとつになる」と語りましたが、世界的な人口増加や異常気象による大凶作、水不足などにより、慢性的な食糧不足が予測されていることから、「21世紀はコモディティの時代」とも言え、同氏は、「今後は証券マンではなく、農民がランボルギーニを乗りまわすようになり、証券マンはタクシーを運転するようになる」とまで述べており、農業というキャリア選択の魅力、将来的な有望性について指摘しています。
実際、平日は都心で会社勤め、週末には農業を行うといった働き方を志向する人が増加しているようです。就農やアグリビジネス参入を志す社会人のためのビジネススクール、アグリイノベーション大学校は、週末に開校するため、仕事を続けながらでも学べる点で人気を博しており、2011年の開校以来、現在では卒業者数は230人を超える規模にまで成長しています。
また、政府はアベノミクス第三の矢である「成長戦略」の目玉の一つとして、農業分野の規制改革を決定しましたが、安倍首相は、「農林水産業・地域の活力向上として、農業・農村全体の所得の倍増を目指し、輸出倍増戦略として、農林水産物・食品の輸出額を2020年までに1兆円へ拡大する」と野心的な目標を掲げており、日本再興に向け、大胆でスピード感ある成長戦略を実施していくことを約束しています。45歳未満の新規就農者を対象に、新規就農者に最長7年にわたって、年150万円を給付する青年就農給付金制度で、新規就農者の増加を狙うべく、テコ入れを図っている点も見逃せません。
農業というキャリアには大きな可能性があります。農業従事者を含む、ありとあらゆる資源が不足しているため、今後数年以内に大規模な食糧危機が起きることも十分想定され、そうなった場合、農業従事者の人材価値はますます高まることでしょう。農業は今後10年~20年にわたって、最も魅力的な職業のひとつになるのです。よりよい未来を迎えたいのなら、ビジネス書など捨ててしまい、農場経営者の下で働けるように、トラクターの運転の仕方から覚えてみるのも悪くないのかもしれません。
(文・勝木健太)