妊娠中の生活習慣次第では胎児の健康にも影響が及ぶことは、誰しもよくご存知のことでしょう。例えば、妊娠中にお酒を飲んだり、タバコを吸ったりした場合、流産や死産へとつながるほか、何らかの先天異常を持った子供が生まれてくる可能性が高くなります。
1~3歳までの乳幼児によく見られるのが小児喘息です。もしかすると妊娠中の心がけ次第では小児喘息のリスクを低減できるかもしれません。
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■妊娠中に野菜を食べると、小児喘息のリスクが下がる
食物繊維の摂取と小児喘息の罹患率との関係性に着目している研究者は少なくなく、そのひとりがスイスのローザンヌ大学病院の医師らでした。その医師らによれば、摂取する食物繊維の量が少なければ少ないほど、肺の粘液へのアレルギー反応が強くなることが確認されています。
そして、子を身ごもったメスのマウスに対しても同様の試みを行おうとしたのがオーストラリアのモナシュ大学のAlison Thorbum博士です。まず、博士らは妊娠第3期の母マウスに対し、高用量、中程度または低用量の食物繊維を与えました。そして、母マウスのお腹にいた子マウスが大人へと成長した時、人間の喘息を引き起こすホコリやダニなどのアレルゲンの入った容器に収容し、その後の経過を観察しました。すると、食物繊維をたくさん摂取した母マウスから生まれてきた子マウスは、食物繊維の摂取量が少なかった母マウスから生まれてきた子マウスに比べ、喘息のような症状が現れにくいという同様の傾向が見出されました。
このような傾向が人間の母親にも見られるのかどうかを確認すべく、妊娠している女性40名の食事データや血液サンプルを解析したところ、妊娠中に食物繊維をたくさん摂取していた母親の血液中には抗炎症性の代謝産物が存在していたこと、その母親から生まれてきた子供は生後1年以内において、呼吸器系疾患を理由に2回以上病院を訪れるケースが少なかったという事実が浮き彫りとなりました。
以上の結果を受け、研究者らは食物繊維によって生成された酢酸塩が子宮内に入り込んだことで、喘息に関わる遺伝子の発現に影響が及び、その結果喘息になりにくい身体が形成されたのではないかという結論を下しています。
出典:Nature Communications
追記:
母親の食物繊維不足が子にもたらす弊害は小児喘息のみに限定されません。
食物繊維が不足すると、妊婦自身のみならず、妊婦のお腹の中にいる子供にまで生活習慣病のリスクが及ぶという点を示した研究報告も出ています。子供の将来のことを考えても、妊娠中は食物繊維の多い野菜や果物を積極的に摂取するのが母親としてベストな選択肢であると言えるかもしれません。
(文・大澤法子)